第六回:尊属殺加重規定

刑法200条 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

自己または配偶者の直系尊属を殺したる者は死刑または無期懲役に処す。


今は削除されて刑法典から消えてますが、昔はこんな条文がありました。
直系尊属というのは親、祖父母などの自分より上の直系の親族のことです。
子供や孫は卑属です。
これが問題となったのは尊属殺法定刑違憲事件(最高裁大法廷1973年(昭和48年)4月4日判決)で、これは刑法200条が憲法14条1項の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」という規定に違反する、として最高裁判所がその機能の一つとして持つ憲法81条の法令審査権(一般には違憲立法審査権と言いますね)を行使して刑法200条を違憲とした判決です。
実は法学部の学生なら誰でも知ってる超有名判決だったりします。マクリーン事件とかね。


内容を俺流で噛み砕いて言うと「ぶっちゃけ子供が親殺したときだけ罪が重いのってありえなくね?親が子供殺しても滅多に極刑はないし、事情によっては執行猶予もつけられるのに」となる。
※刑法199条殺人の罪「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する」
※刑法200条は、最低刑が無期懲役だからどんなに減刑してたとしても懲役3年6ヶ月にしかならず執行猶予がつけられない(執行猶予がつけられるのは懲役三年以下のみ)。学生さんは実務はさっぱりなので理由はよくわかりません。


最近は親戚殺したりするアホが多いからちょっとタイムリーかなと思ったり。
以上この制度が現在もあったとすれば、この規定で起訴された事件はまず間違いなく裁判員が担当していたんだろうなーということでした。


詳しく知りたい人はこっち見るほうがいいかも:
尊属殺Wikipedia
尊属殺法定刑違憲事件Wikipedia
栃木実父殺し事件無限回廊